マッチリポート

降格回避の立役者は誰?私が選ぶ2019松江シティFC MVP&ベストゲーム

2020年1月2日

トロフィー

スポンサーリンク

MVPは、この選手

2019年、松江シティFCのMVPと言えば、やはりこの選手の名前を挙げないわけにはいきません。宮内寛斗です。

宮内は2019シーズン29試合に出場、チームトップの9得点を上げました。確かな技術と相手を翻弄するアイデア溢れるプレーは観ていて本当に楽しかった。加えて労を惜しまぬ献身性。試合開始から絶えず相手にプレッシャーをかけ続け、相手キーパーへのバックパスにも果敢にアプローチし「何とかしよう」という気持ちを常に見せてくれる選手でした。

運動量の多い選手は試合終盤にもなると体力的にキツくなってプレーの精度がどうしても落ちてしまいますが、宮内の場合は終盤になっても体力が落ちず、むしろそこからゴールの匂いが漂うプレーをいくつも見せました。この後半30分過ぎの相手チームにとって失点の恐怖が伴う時間帯は松江シティサポから「宮内タイム」と呼ばれ、宮内本人もそのネーミングをどうやら気に入ってくれたようです。

宮内にさらに求めるものがあるとすれば警告を減らすことでしょうか。警告5は松江シティでトップ。カードをもらわないまでも判定に異議を唱えたり、試合中に苛立ちを見せる場面も散見されました。今後メンタル面のコントロール能力を身につけることで、相手にとって一層手に負えない選手に育っていくことでしょう。

松江シティには欠かせないファンタジスタ宮内でしたが、先ごろヴェルスパ大分への移籍が発表されました。2019シーズン、チームの成績が振るわず守備的に戦わざるを得なかった松江シティの中でそれでも孤軍奮闘する宮内でしたが、おそらくはもっと攻撃的に戦いたかったに違いありません。Honda FCの井幡監督によれば2019年、戦っていて一番楽しかったのはヴェルスパ大分だそうです。おそらく宮内はヴェルスパで楽しいサッカーをしつつ、さらに自身を成長させたいとの思いが強くあったのかもしれません。松江を離れてしまうのは残念ですが、彼の決断を尊重し(松江シティ戦以外での)さらなる活躍を期待したいです。

ベストゲーム

ホームで2点のビハインドから4点を奪って逆転勝ちした流経大ドラゴンズ龍ヶ崎戦とどちらにしようか迷いましたが、やはりここはJFL残留を決めたアウェイでの最終節をベストゲームに推したいと思います。こちらも流経大ドラゴンズが相手です。

この試合を振り返ってみますと、まず残留がかかる最終節の大一番にもかかわらず流経大の選手たちが試合前からかなりリラックスしていて、この平常心のまま戦われるのは非常にイヤだな、という感じがしていました。

この日のボールパーソンは流経大の下級生たちが務め、彼らの入場時には何とドリフの「ヒゲダンス」のテーマが会場内に流れました。中には踊りながら入場する者もおり「ここは本当に残留をかけた最終決戦の場なのだろうか」と疑問を抱くほどの緩い空気がピッチ全体を支配していました。(ちなみに彼らが「ヒゲダンス」をBGMに使用したのは、もしかすると松江に縁のある「Official髭男dism」通称「ヒゲダン」に因んでおもてなしの意味を込めていたからなのかもしれません(笑))

閑話休題。

この試合引き分けでも残留が決まる松江シティは、試合開始から前線の多木を目掛けてロングボールを多用し、低い位置でボールを失うことがないようにリスクを避けた戦法を取ります。一方残留には勝つしかない流経大はマイボールにすると人数をかけて前線に攻め上がり、個人技を活かしてシュートチャンスに持ち込んでは思い切りよくどんどんシュートを放ってきました。流経大が序盤に圧力をかけてくることは想定内だったのか松江シティの各選手はこれに落ち着いて対処し、時間経過と共に今度は徐々に松江が相手陣内に攻め込む時間が長くなってきます。しかしお互い決定機が少ないまま前半はスコアレスで終了。

後半になると早々にスコアが動きます。筒井の入れたロングスローのこぼれに平林が頭から飛び込み、これを流経大の選手がファウルで倒してしまいPK獲得。このPKを宮内が落ち着いて決め松江シティ待望の先制点。

以後、松江シティは相手の攻撃に粘り強く耐え、スコアが動かないままタイムアップ。最終節の勝利で何とかJFL残留を果たしました。

リーグ戦最終盤のFC大阪戦・マルヤス岡崎戦・ラインメール青森戦と最後のところで失点し勝ち点を落とし続けた松江シティでしたが、最終節では守備の集中力が最後まで切れませんでした。スコアこそ1-0ですが、試合の開始から終了まで終始松江が試合をコントロールしていたように思います。引き分けでも良い、という状況のおかげかもしれませんが、いずれにしても今季はチーム全員が同じ絵を頭に描いて最終的にきちんと完成させた試合がなかなか無い中、最終節はそれができた。そういう意味でも、やはりこの試合はベストゲームと言っていいのかもしれません。

特別賞 ホーム最終戦で起きた珍シーン

最後に2019シーズンで一番印象的だった珍しいシーンを番外編として記しておきます。第29節ラインメール青森戦、84分の出来事です。

この試合、前半1-0で折り返した松江シティでしたが、試合終盤の81分に青森に同点ゴールを許してしまいます。残留に向けて勝ち点3がどうしても欲しい松江シティは、勝利を諦めずその後も果敢に青森陣内に攻め込み、83分には多木理音がミドルレンジから渾身のシュート!このボールは青森の選手に当たりゴールラインの外に出て松江シティがコーナーキックを獲得。

ここでテクニカルエリアで指示を送っていた田中賢治GKコーチが大声で主審に向かって何かを猛アピールします。スタンドで観ていた私にも時折「ハンドだよ!」という田中コーチの怒声が届いていました。ペナルティエリア内で青森の選手がハンドをしてしまったのなら松江シティにはペナルティキックが与えられます。この大事なジャッジを巡る抗議、田中コーチは全く引く様子がなく、かなり長い時間執拗に主審に食い下がります。
そしてついに、田中コーチにはイエローカードが出されてしまいました。
結局判定は覆らず、松江シティのコーナーキックで試合再開。

このとき私が思ったのは、田中コーチの抗議の間、青森の選手たちの集中力が切れてしまったのではないかということ。コーナーキックの判定から間を置かずプレーが続いていたら緊張を保てたでしょうが、試合の流れがしばらく中断し、マインドがリセットされると再び同じレベルに引き上げるのはなかなか難しい。特に高い集中力が要求されるセットプレーの守備には大きな影響を与えるだろうから、松江シティはチャンスだ、と。

すると案の定というか、コーナーキックのボールに飛び込んできた中井栞吏を青森の選手は誰もマークせず完全にフリーにしてしまい、中井はこれを難なく頭で合わせて勝ち越し点をゲット!土壇場でのゴールに観客席は大いに沸きました。

思うにあの猛抗議はこうした展開を見越した上で田中コーチが最初から仕組んだ作戦だったのかもしれません。勝利・残留に向けてベンチからでもできることは何でもやってやる、という執念を感じた瞬間でもありました。

2020シーズンも我々の目の前で数々の名場面が繰り広げられることでしょう。
新型コロナウイルス禍が一刻も早く収束し、JFLが無事開幕を迎えられることを心から祈念しております。

-マッチリポート