クラブ関連情報(2023年)

FC神楽しまね 解散

2023年3月21日

プロモーションを含みます

2023年3月14日、FC神楽しまねの運営会社である松江シティFC株式会社は松江地方裁判所に破産手続きの開始を申請。負債総額は3憶5千万円と報じられています。

育成組織の活動は1月31日付けで停止し、トップチーム選手も全員が退団。既に事実上の解散状態だった神楽しまねはこれで正式に解散が決定

2012年に将来のJリーグ参入を高らかに宣言し、2019年にはJリーグの1つ下のカテゴリであるJFL(日本フットボールリーグ)に昇格。目標のJリーグまであと一歩のところまで迫った島根県のサッカークラブは、志半ばで消滅してしまいました。

経緯

2022年7月にFC神楽しまねの給与未払い問題が発覚。これがきっかけとなってクラブが深刻な資金難に陥っていることを各種メディアが一斉に報じました。

クラブは「緊急支援金のお願い」を表明し寄付金を募集。集まった資金のほとんどがリーグ戦の残り試合を戦い抜くための運営費や遠征費に充てられ、クラブは何とか2022シーズンを完走します。

2023シーズン以降もJFL参戦を希望し、経営再建計画をJFL理事会に何度も諮って再起を試みた神楽しまねでしたが、2023年1月20日までに支払うとしていたJFL年会費や選手らの未払い給与が支払えなかったことが決定打となり、1月23日の理事会でJFL退会が決定。クラブがこのまま解散するのか、あるいは県リーグ等の下位カテゴリからやり直すのか去就が注目されていました。

ここまでの経緯は次の記事にまとめています。

参考FC神楽しまね JFL退会

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その後クラブは公式サイト(現在は閲覧不可)にて1月31日付けで育成組織の活動を停止する、と発表。

育成組織の活動はクラブが新設した松江シティフットボールクラブに移管され、小学生以下を対象にしていたサッカースクールは神楽しまねで選手として活躍した佐藤啓志郎さんが代表を務めるKEISHIサッカースクールが引き継ぐことになりました。

またJFL退会が決定するまではクラブに留まっていた選手たちも退会決定後に続々と退団。神楽しまねは「JFL退会のお知らせ」を公式サイトに掲載以降選手らの退団発表を全く行わなくなり、移籍先のクラブや選手本人のSNSでその去就を知る他なかったのですが、それらの情報を総合するとほぼ全ての選手がクラブを退団。もはや解散発表は時間の問題という状況でした。

参考FC神楽しまね 2022シーズン在籍選手去就一覧

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しかしクラブは一向に解散発表を行わず、3月14日に松江地裁に破産手続きの開始を申請したことがメディアに報じられてようやく「FC神楽しまね」の解散が世間に周知されます。2022年7月以来世間を騒がせ続けたこのクラブの問題も遂にここで区切りを迎えることになりました。

私見

給与未払い問題発覚以降、クラブ側は最後まで公式に何の説明もしないまま解散の道を選びました。

クラブの現状や経営再建案について当時の宮瀧譲治社長は「機会を見て説明する」と都度語ってきましたが、最後までその約束が履行されることはなかったのです。

取り分け残念なのがクラブの解散という非常に重い決定事項についてもクラブ自らが公表しなかったこと。せめて最後くらいはクラブから正式にコメントを発するべきではなかったでしょうか。

2022年7月以降無給で働かされ続けた選手・スタッフ・社員、またどんな時もクラブを応援してきたファン・サポーター、そして緊急支援金に協力してくださったサッカーファミリーの皆様やスポンサー様など、これまでクラブを支えてきた全ての人々に対する重大な裏切りをこのクラブは平然と犯してしまったのです。実に不誠実かつ不義理極まりない行為としか言いようがありません。

かつてクラブに在籍していた選手たちからもクラブに対し説明を求める声が上がっています。

しかしこうした選手たちの声がかつてのクラブ経営陣に響くことはおそらくないでしょう。

彼ら経営陣に「クラブは解散してしまったが島根県サッカーの将来のために最後は説明責任を果たそう」という良心が少しでもあることに期待したいのですが、その可能性は極めて低そうです。

島根県サッカーの今後

FC神楽しまね無き後、島根県でJリーグに一番近いのは中国サッカーリーグ(CSL)に所属するベルガロッソいわみということになりました。

ベルガロッソは2030年までにJリーグに参入することを2022年に宣言したばかりです。2023年からは従来の浜田市だけでなく石見地区全域をホームタウン化。スポンサーも順調に増え続け、島根県西部からのプロスポーツクラブ誕生に大きな期待がかかっています。

将来的な懸念事項としてはホームゲームの開催会場であるサンビレッジ浜田・島根県立サッカー場がいずれもJリーグのスタジアム基準を満たしていないこと。

目標としている2030年までにこのスタジアム問題の道筋をつけられるかがJリーグ参入に向けてひとつの大きなポイントになるかもしれません。

また島根県西部は東部(松江・出雲地区)に比べると人口が少ない地域であるため、集客に関してはかつての神楽しまね以上に苦戦するかもしれません。もっとも西部には競合するプロスポーツクラブが無いので、ベルガロッソいわみ一択で多くの観客を集めることも当然可能でしょう。クラブの今後の戦略に注目したいです。

次に島根県の東部に目を向けると、2022シーズンの中国サッカーリーグに参戦していたSC松江(2023シーズンは島根県リーグ1部に降格)があります。このクラブは現在のところアマチュアクラブとして活動しておりJリーグ参入を目標としていません。

しかしFC神楽しまね(松江シティFC)の母体となったクラブ(ヴォラドール松江)がかつてはアマチュアクラブだったように、将来はSC松江を母体としてJリーグ参入を目指すクラブが立ち上がることがあるかもしれません。

とは言え、今回神楽しまねが残した傷は余りにも深く「島根県東部にJリーグ入りを目指すクラブを再び作る」という機運にはなかなかなりにくいでしょう。5年先かあるいは下手をすると10年経ってもそのムーブメントが起きない可能性もあります。

ではその5年10年を神楽しまねの喪失感を抱えたまま我々は無為に過ごすのか、と問われればその答えは間違いなく「否」

いずれ東部にJを目指すクラブができたとき必ず課題になるであろうスタジアム問題を解決するために今から行政や地方議員等に働きかけておくとか、地元でサッカーに興味を持つ人を増やすため近場で開催されるJリーグや地域リーグの試合観戦に友人・知人を誘ってみるとか、色々と「その時」に向けて準備すべきことはあると思われます。

例えばもし老朽化の著しい松江市営陸上競技場に代わる立派なスタジアムが完成すれば、それがJリーグ入りを目指すクラブを設立するための呼び水になるかもしれません。そんな希望も捨てずに抱いていたいところです。

今回の神楽しまねの件はあまりにも悲しく、そして最後まで後味の悪いものになってしまいました。

もう二度とあんな思いはしたくないですし、そうならないためにも次のチャンスが得られるまでに自分ができることがあるのなら後悔しないよう精一杯取り組んでおきたいと思います。

そしていつか地元に心から応援できるクラブが再び出来ることを信じて、その実現を常に願い続けて行きたいです。

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