以前ブログで取り上げたことがある「ディス・イズ・ザ・デイ」という書籍について、当時の記事を加筆修正の上であらためてご紹介します。
どんな作品?
芥川賞作家・津村記久子さんの著作で2018年6月に刊行されました。
このお話はプロサッカーの2部リーグが舞台です。
以下の架空のサッカークラブ22クラブが登場します。
架空のクラブ名 | 所在地 | 刊行当時の状況 |
ネプタドーレ弘前 | 青森県 | Jクラブなし県 |
遠野FC | 岩手県 | |
白馬FC | 長野県 | |
CA富士山 | 山梨県 | |
川越シティFC | 埼玉県 | |
松戸アデランテロ | 千葉県 | |
三鷹ロスゲレロス | 東京都 | |
カングレーホ大林 | 東京都 | |
熱海龍宮クラブ | 静岡県 | |
ヴェーレ浜松 | 静岡県 | |
鯖江アザレアSC | 福井県 | JFLクラブなし県 |
琵琶湖トルメンタス | 滋賀県 | Jクラブなし県 |
オスプレイ嵐山 | 京都府 | |
伊勢志摩ユナイテッド | 三重県 | Jクラブなし県 |
奈良FC | 奈良県 | Jクラブなし県 |
泉大津ディアブロ | 大阪府 | |
姫路FC | 兵庫県 | |
松江04 | 島根県 | JFLクラブなし県 |
倉敷FC | 岡山県 | |
アドミラル呉FC | 広島県 | |
モルゲン土佐 | 高知県 | JFLクラブなし県 |
桜島ヴァルカン | 鹿児島県 |
作品中の設定ではなく現実世界の話として、青色のクラブがホームタウンとしている県はJリーグクラブのない県、赤色の県はJFLクラブもない県(いずれも2018年刊行当時)です。
著者の津村さんがこうした「Jクラブのない県」にあえてプロサッカークラブを設定してくださったことをまずは純粋に嬉しく思いました。
なぜ「2部リーグ」が舞台?
津村さんはどうして「2部リーグ」を舞台に小説を書こうと思われたのでしょうか。
また福井・島根・高知という当時はJFLクラブすらない県にサッカークラブを設定したのは意図的なことだったのでしょうか。
その答えはサッカーノンフィクションライターの宇都宮徹壱さんがまとめたインタビュー記事にありました。
宇都宮さんのウェブマガジンは本来有料なのですが、津村さんへのインタビュー記事は無料で掲載されています。
ロングインタビューのため記事が前後編2つに分かれています。
・なぜ芥川賞作家は「J2」をテーマに小説を書いたのか?『ディス・イズ・ザ・デイ』津村記久子インタビュー<1/2>
・なぜ芥川賞作家は「J2」をテーマに小説を書いたのか?『ディス・イズ・ザ・デイ』津村記久子インタビュー<2/2>
この記事を読むと応援するサッカークラブがあることの喜びをあらためて感じることができ、無性にまた各地のスタジアムに行ってみたくなります。
サッカークラブ「松江04」
作品中「松江04」は千葉の「松戸アデランテロ」とホームで戦います。
松江在住の青年が父方の祖母を松江に呼んでこの試合を観戦する、というお話なので松江市内の様子やナチュラルな出雲弁も登場し、読んでいて思わず頬が緩んでしまいました。
主人公の青年と父方の祖母には微妙な距離感があり、その緊張感が程良いスパイスになっていると感じました。
この本が刊行された1年後、島根県にはJFLクラブ・松江シティFCが誕生することになります。
また同じ年、青森県にもヴァンラーレ八戸というJ3クラブができました。
そしてさらにその1年後には高知県の高知ユナイテッドSCがJFLに参入しています。
この作品に取り上げられた「J空白県」のクラブは上位カテゴリに昇格する、というご利益があるのかもしれません。
2部リーグ最終節を取り巻くサポーターたち11話のドラマと昇格プレーオフのエピローグ1編で構成された本作品。
サッカーファン、とりわけJリーグファンは一層楽しく読める作品に仕上がっていると思いました。
興味を持たれた方、機会があれば是非ご一読を。