クラブ関連情報(2022年)

FC神楽しまね JFL退会

2023年1月24日

2023年1月23日、JFL(日本フットボールリーグ)は理事会を開き、経営難に陥っているFC神楽しまねの2023シーズンJFL参加を認めないことを決めました。

未払いとなっているJFL年会費や選手・スタッフらの給与が支払われていないことがその理由としています。

神楽しまねは松江シティFC時代の2019シーズンから4シーズンJFLに在籍しましたが、この日の理事会の決定を受けてJFLを退会

今後クラブは県リーグ以下のカテゴリからやり直すことになるのか、あるいはこのまま解散してしまうのか、近日中に役員会を開いて決定するとしています。

経緯

2022年7月、FC神楽しまねの選手・スタッフ・社員の7月分給与が未払いであることが地方紙の山陰中央新報で報じられます。

クラブ側はこの事実を認め7月末には公式サイト上で「緊急支援のお願い」を掲載し支援金を募集。支援金により7月分給与の一部は賄えたものの、他の集金手段がないことで7月分の残りに加え8月分・9月分の給与も全額未払いとなる事態に。

ここまでの詳細内容は下記の記事にまとめています。

参考FC神楽しまね 給与未払い報道

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その後も給与の未払いは続き10月分・11月分も全額未払い

11月上旬の時点でチームは成績面でのJFL残留条件はクリアしていたものの、JFL理事会から「現在の経営状況のままでは2023シーズンに神楽しまねがJFLに参加することは難しい」との見解を示されます。

それでもクラブ側は11月中旬にJFL残留の意向を表明し、経営再建案をJFLに提出。12月6日のJFL理事会で再建案を踏まえた上で神楽しまねのJFL残留可否が判断されることになりました。

しかし当日の理事会では「判断材料が不十分」として継続審議となり、クラブ側は再び再建計画書の作成に着手。年内提出を目標としていた再建案は年明けになってようやく提出され、2023年1月6日の理事会で審議されますが再び「実行性に乏しい」との理由で継続審議に。

JFL残留可否の結論が出ないままJFLは1月13日に2023シーズンのJFL第1節・第2節およびホーム開幕戦の対戦カードを発表。「(神楽しまねのJFL参加が)承認された場合として」という但し書き付きが付いた異例の発表となりました。

JFLは神楽しまねに対し「実行性の根拠がある再建計画書の策定」に加えて「未納のリーグ年会費未払い給与1月20日までに支払うこと」を求めており、クラブは既存のスポンサーを中心に資金調達に奔走。スポンサー料支払いの確約書を取るなどして2022年12月末時点で一旦は未払い金支払いの目途を付けていました。しかし現実に資金を確保した上で未払い金を支払う段階には至らず、結局期限までにJFLが課した条件をクリアすることができなかったということです。

この結果、1月23日のJFL理事会で神楽しまねは2023シーズンのJFL参加を認められず、そのままリーグを退会することになってしまいました。

遅すぎた判断

本件はどんなに遅くとも2022年12月中には決着していなければならない問題でした。

JFL・加藤桂三理事長は「できれば引き続きともにリーグ戦を戦っていきたい、という気持ちを多くの方々がお持ちになっていたのも事実」と理事会における各理事の温情が結論をこれだけ長引かせたと語っています。

理事会の理事はJFL加盟クラブから1名ずつ選出されてします。同じリーグで戦う仲間として理事たちが神楽しまねに引導を渡すことに躊躇いを感じたのは無理もないことなのかもしれません。

しかし決着がここまで遅くなったことで各方面に大きな影響が生じます。

「JFL残留」の前提で今もまだ神楽しまねに残っていた選手たちはこれから移籍先を探すことになりますが、多くのクラブで既に新体制が固まっている時期ですのでかなり苦労することは間違いありません。

また神楽しまねが存続を望み県リーグからやり直すとした場合、受け入れ先の島根県社会人サッカーリーグや島根県サッカー協会との調整を「これから」始めないといけません。果たしてそんな時間はあるのか。第一、今から県リーグに参戦できる陣容を整えられるのか、という問題もあります。JFL参戦可否の審議が長期化する間に神楽しまねは選手・スタッフの退団が相次ぎ、1月23日の時点で残った選手は11名。当然この人数では戦えないので新加入選手を集めなければなりませんが、給与未払いのクラブに進んで加入したいと思う選手はそうそういないでしょう。

存続を望むとしても2023シーズンからの活動はなかなか難しいように思われます。

経営者の責任

今回、神楽しまねが資金難でJFL退会を余儀なくされたことに対してよくあるコメントが「島根のような地方の県でプロサッカークラブを運営するのは無理」というものです。

果たしてそうでしょうか。

確かに大企業が少ない地方の県では潤沢な資金を確保しながら安定的にプロスポーツクラブを運営していくのは容易なことではないでしょう。しかし要は「やり方」であって、お金が無いなら無いなりの「やり方」があります。決して無理なことではないはずです。

そういう意味で今回の失敗の原因はとにかく神楽しまね経営陣に経営センスも才能もまるで無かった、ということに尽きると思われます。

スポーツライター・藤江直人氏のこちらの記事から加藤桂三理事長へのインタビューの一部を引用します。

最終節まで矜恃を抱いて戦った選手たちに対して加藤理事長は謝意を表した。同時に神楽しまねの経営陣に対しては、不快感がにじみ出る言葉を残している。 「やはり法人組織、役員の方々のなかに何か問題があったのではないか。さらに適切な法人運営がなされていたのかどうか。こうした点についても疑問の余地があります。何よりもこのようなことが起きて、半年以上も何も対応ができていない現実からすると、会社自体のガバナンスといったものが実際には成り立っていない状況ではないのかと」

我々よりはるかに近くで神楽しまねの経営陣を見てきた加藤理事長が非常に厳しいコメントを寄せています。神楽しまねの経営体制や役員らが如何に酷かったかが伺えます。

そもそも昨年の4月、宮瀧譲治氏が新たに代表取締役社長に就任したタイミングからして不可解でした。

本来会社の代表者が変わるのであれば事前に公式サイトのニュースリリースなどで告知してからというのが普通ですが、何の前触れもなく唐突に代表者が交代。交代してしばらく経ってから公式サイトで告知がありましたが、前代表者の吉岡健二郎氏が退き、後任に宮瀧氏が就任するという事実を淡々と伝えているだけで、交代の理由なども運営会社からは一切説明がありませんでした。

ニュースリリースを後回しにしてでも代表者の交代を急いだのには何か特別な理由があるのではないか。そしてその理由を誤解のないように世間に公表するため告知内容の作成に時間をかけているのではないか、と色々推測を巡らしていただけに、当たり障りのないリリースを見たときには拍子抜けしました。そして「この程度の告知をなぜ事前に行わなかったのだろう。もしかすると会社にとって何か不都合な事実を隠そうとしているのかもしれない」と微かな不信感が芽生え始めたのもこの時でした。

おそらくこの頃には既に7月に資金がショートすることは見えていたのでしょう。

そのため前代表者の吉岡氏が辞任。悪く言えば経営を投げ出して会社を去ったため後任として宮瀧氏が就任せざるを得なかった、というのが実情のような気がしています。(あくまで私個人の想像です。)

このような借金だらけで資金難の会社を引き継いだ宮瀧氏にも同情すべき点はありますが、それにしてもあまりにも無策過ぎました。

実際に給与未払いが発覚してからも「とにかく何としてもお金を集めて未払いの給与を一刻も早く払うんだ」という気概が傍から見ていても全く感じられず、集金もただただ募金に頼るばかり。そうして集まったお金も選手らの給与ではなくひたすら遠征費に充てる。とにかく「JFLに迷惑をかけないように何とかシーズン全試合を消化する」ということしか頭の中には無いように感じられました。

その証拠に宮瀧氏はシーズン終了直後の2022年11月末で早々にクラブを離れ、既にクラブ運営からは手を引いているということです。

「2022シーズンを完走する」ということだけが宮瀧氏の就任当初の目標であったのなら、氏の退任をもって神楽しまねはJFLを自主退会すべきでした。なぜ宮瀧氏が去った後も残った役員らはJFL残留に拘り続けたのでしょうか。

本来であればこうしたクラブに対して我々が抱いている数々の疑問を解消する場を設定して欲しいところですが、これまでのクラブの対応を見る限りその望みは極めて薄そうです。

存続に向けて

今回の給与未払い問題に関連してクラブは元ジュニアユースのコーチから未払い給与と違約金の支払いを求める民事訴訟を起こされています。

しかし2回の口頭弁論の場に被告であるクラブ側は出廷せず、抗弁の書面も提出せずに裁判は結審。判決が2月1日に言い渡されることになりました。

裁判に真摯に向き合わないこのような不誠実な態度にも批判の声が寄せられており、今やクラブの信用は完全に地に落ちたと言っても過言ではありません。

クラブが今後も存続を目指すのか現段階では分かりませんが、もし存続するとしてもその信用回復には相当な時間と努力が必要になります。たとえ経営陣が総退陣し、クラブ名を変えたとしても器が変わらなければ同じでしょう。

何よりまず未払い給与の支払いを完了すること。

それができてからが本当の意味でのリスタートになるのではないでしょうか。

今後クラブが存続するのかしないのかの判断については悠長に時をかけず、とにかく一刻も早く決めてもらいたいところです。

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