松江シティFC 0-1 Honda FC
2021年 7月 3日(土) 15:00 Kick off
島根県立サッカー場
観客 407人
2021シーズン、松江シティは益田市で3試合のホームゲームを戦います。
この日はその最初の試合。
益田市でJFLの公式戦が開催されるのは初めてのことです。
対戦相手は絶対王者と呼ばれJFLの門番として君臨するHonda FC。
生憎の雨の中、それでも400人を超える観客が会場に集まり、試合を見守りました。
スターティングメンバー
松江シティFC
松江シティは前節・MIOびわこ滋賀戦同様、垣根拓也をアンカーに置いた3-3-2-2。
ウィングバックはこれまで左でスタメン出場が続いた澤島輝が控えに回り、左に菅本岳、右に筒井俊という布陣になりました。
出場停止の山本蓮に代わって右インサイドハーフのポジションは佐藤啓志郎が務めます。
自陣に引いて守る際は両ウィングバックがDFラインに下がって5バックを形成しつつ、佐藤が垣根の隣に下りてきて中央を固め、5-2-3の強固なディフェンス網を築いているのが特徴的でした。
Honda FC
Hondaのフォーメーションは4-2-3-1。
攻撃時には左右のサイドバックが非常に高い位置を取り、残ったセンターバックの2人とボランチの1枚がDFラインに下りてきてビルドアップに加わるため、一見3バックなのかと錯覚してしまうくらいでした。
試合経過
前半
試合開始から互いに攻め合う両者。
双方ともにパスのつながりも良く、スピーディーに相手陣内に攻め込みますが最後のところでプレーの精度を欠き、なかなかシュートにまで至ることができません。
一進一退の攻防を繰り返す両者でしたが、35分を過ぎたあたりからHondaの攻撃の圧力が増してきます。
38分にはペナルティエリア手前のポッカリ空いたスペースでパスを受けた鈴木選手が強烈なミドルシュートを放ち、枠を捉えますが、井上亮太が僅かに指先に当ててコースを変えコーナーに逃れます。
続く40分には、先ほどとほぼ同じような位置から原田選手がミドルを打ちますが、これも井上が弾き出してHondaに得点を許しません。
42分、今度は松江の攻撃。
センターサークル付近から髙畑智也が相手DFラインの裏へ抜け出してボールを受けると、ペナルティエリア手前まで運んでミドルシュート。しかしこれは惜しくも枠を外れます。
松江はこの髙畑のシュートが前半唯一のシュートでした。
アディショナルタイムには左サイドからのグラウンダーのクロスをHondaの選手に合わせられ「あわや失点か」という場面もありましたが、ボールがクロスバーを越え松江は命拾い。
結局前半は松江0-0Honda。
ほぼ互角の展開ながら、Hondaがシュート数と決定機の数では若干上回り、後半へと向かいます。
後半
後半頭に、まずHondaが最初の選手交代。左サイドバックの岩切選手を下げ、八戸選手を投入。
後半も立ち上がりから拮抗した展開が続きますが、5分を過ぎると松江シティに次々と決定機が訪れます。
51分、Hondaのペナルティエリア内で完全にフリーになった佐藤啓志郎がシュートを放ちますが、これは僅かに枠外。
続く52分には遊馬将也が相手DFを引き連れながらゴールエリア手前の絶好の位置でシュートを打ったものの、DFがシュートコースに入ってこれをカット。ボールはクロスバーを越えていきます。
さらにこのプレーで得たコーナーキック。髙畑智也の蹴ったボールをファーサイドで受けた遊馬が、ペナルティエリアの外側で待ち構えていた松下大祐に送ると松下はミドルシュートを敢行。しかしこれもHondaの選手に当たって枠外に弾かれていきます。
55分にはHondaの逆襲を受け、松江ゴール前での混戦の状況からシュートを打たれますが、ここでも井上亮太が右手一本でボールをかき出し松江を救います。
58分にはHondaが二人目の選手交代。右SHの原田選手に代わり岡﨑選手が投入されます。
ここからしばらくの間、双方共に攻め合いますが最後のところでなかなかシュートを打たせてもらえず、膠着した状況になります。
68分、Hondaのフリーキックのチャンスで松江DFの背後でボールを受けた児玉選手が井上と激突。このプレーで井上が起き上がれなくなり、一時場内が騒然となります。
松江ベンチからは田中賢治GKコーチが児玉選手のアフターチャージを主張するも受け入れられず、判定はHondaのコーナーキック。
幸い井上は数分後、治療を終えてそのままプレーを続行。松江は事なきを得ます。
73分には松江がこの日最初の選手交代。左ウィングバックの菅本岳に代わって澤島輝が入りました。
同じタイミングでHondaも3人目の選手交代。左SHの冨田選手が下がり﨑山選手が起用されます。
そして76分、問題の場面です。
松本選手が保持していたボールに遊馬将也がアプローチしてこれを奪取。すると松本選手はドリブルを始めようとした遊馬の背後から故意に足を蹴って転倒させます。
このプレーで松本選手はレッドカード。一発退場となり、Hondaは残り時間を10人で戦うことになりました。
1人少なくなっても数的不利を感じさせないHondaに押される場面もあった松江でしたが、83分、遂に均衡を破ります。
馬場将大のゴール右隅を狙ったループ気味のミドルシュートはHondaのGK楠本選手の好守に阻まれますが、これで得たコーナーキック。
髙畑の低い弾道のクロスに川中健太が上手く右足を合わせてゴール左隅に流し込み、松江シティに先制点。松江1-0Hondaとなります。
1点を追うHondaはここから攻撃の圧力をさらに強め松江に襲いかかります。
85分には鈴木選手が遠めの位置からミドルシュート。枠を捉えましたが、またしても井上が左手一本でセーブ。
直後にHondaは最後の選手交代。
FWの児玉選手を中島選手に、CBの清水選手を冨永選手に代えます。
一方の松江はここまでの交代は1人のみ。おそらくは実信憲明監督の「バランスを崩したくない」との思いがあったのだろうと推察されます。
アディショナルタイムに入ってからはHondaの怒涛の攻撃が続きシュートを次々に打たれますが、松江の選手は最後のところで身体を張りシュートをブロックし続けます。
松江は90+2分に川中に代えて堀田佳佑、90分+4分には遊馬に代えて伊能玲生を投入し、時計の針を進めつつ前からの守備に期待を込めた交代をします。
結局松江はHondaの猛攻を最後まで凌ぎ切り、松江1-0Hondaのスコアで勝利。
松江シティは王者Honda FCから嬉しい初勝利を挙げ、今季初の連勝を飾りました。
戦評
ひと言で表すと、スピード感と緊張感のあるとても面白い試合でした。
両者とも非常にスムーズにパスが回り、つまらないミスがほとんどなく、また球際の攻防にも迫力がありました。
これは島根県立サッカー場のピッチの良さあってこそのようにも思います。
芝生を含めたグラウンドの整備が行き届いており、雨が降っても水溜りが出来るわけでもなく、逆にボールが走るのでパス回しの際のノッキングが全くと言っていいほどありませんでした。
松江にもこういう球技場が欲しいと切に思った次第です。
さて、松江シティはHondaからついに初勝利を挙げたわけですが、過去3試合も完膚なきまでにやられたわけではなく、特にスコアレスドローに終わった昨季のホームゲームは、勝利まであと一歩のところまで王者を追い詰める戦いができていました。
松江シティはフィジカルでゴリゴリ押してくるチームには弱いのですが、パスサッカー主体の地上戦で挑んでくる相手とはお互いがかみ合った好試合を演じることが多い。昨季も今節もHonda戦はまさにそんなゲームでした。
また今節のHonda戦では、各選手の相手ボールホルダーに対する寄せが非常に速く、球際も際立って強かったように感じました。試合終了までほとんどスタメンで戦っていたにも関わらず、最後までチームとしての運動量が極端に落ちなかったのも素晴らしかった。
王者Hondaとの対戦、あるいは初の益田開催など気合が入る要因はいくつもあったのでしょう。
実信監督が常々選手たちに求めているハードワークが結実した見事な試合だったと言えます。
次節の対戦相手
次節は7月11日(日)15時から松江市営陸上競技場でのホームゲームです。
対戦相手は高知ユナイテッドSC。ここまで14試合を消化し、6勝8敗の勝ち点18で12位の成績。
ここ2試合はHondaに0-5、FC刈谷に1-4と大量失点が続いています。
高知としてはアウェイゲームでもありますし、松江シティ戦はまず守備を意識して挑んでくるでしょう。
得点力の高くない松江シティですが、なんとか高知の守備をこじ開けて得点を奪い、リーグ戦3連勝を飾ってもらいたいものです。
元松江シティ戦士・西村光司選手の凱旋も楽しみですね。