現在テレビ東京系列では「追跡LIVE!SPORTSウォッチャー」というスポーツ情報番組が放送されています。
(放送時刻:毎週月~金曜夜11時58分/土曜夜11時/日曜夜10時54分)
毎週土曜日には「Human ウォッチャー」という特別企画のコーナーが設けられており、ここで一人の人物にスポットを当てたドキュメンタリーを紹介しています。
2021年1月23日の放送回では、今季からJFLに参入するFCティアモ枚方の小川佳純監督を取り上げていました。
番組内コーナーと言えども放映時間は20分もあり、これだけで一本の番組と言って差し支えないほど内容の濃いコーナーでした。
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関西サッカーリーグの立ち位置
番組ではまず小川佳純監督がティアモ枚方の監督を引き受けることになった経緯を説明していくのですが、その前に当時ティアモ枚方が所属していた関西サッカーリーグについての解説が入ります。
・関西サッカーリーグはJFLの一つ下の「地域リーグ」
・J1を「1部」とするなら「5部」に相当
・J1が華やかな大企業なら地域リーグは町工場
例え方の是非はともかく、ティアモ枚方がどういうポジションのクラブなのかが淡々と語られます。
決まった練習場もなく市営グラウンドを転々としたり、監督と言えど試合会場設営やボール磨きなどの雑用もこなさなければならない。
小川監督は「プロがいかに恵まれていたかということが分かる。でもここには自分たちで作り上げていく楽しみがある」と語ります。
このようなある意味過酷な環境に置かれている地域リーグクラブの監督を引き受けることになった理由は一体何だったのでしょう。
ティアモGM 巻佑樹
選手としての小川佳純は2007年に名古屋グランパスに入団後、J1通算301試合出場・37ゴールという実績を残しています。
しかしアルビレックス新潟在籍時の2019年は出場試合が僅かに5試合。同年に新潟を契約満了となります。
入団先を探していた小川佳純に声をかけたのがティアモ枚方でGMを務める巻佑樹。小川選手とは名古屋グランパスで同期の間柄です。
巻GMは最初に選手として小川佳純にオファーを出しています。
しかし当時のティアモ枚方は監督がなかなか決まらない状況。
「ズミ、監督に興味ない?」
結局、巻GMのこの言葉がきっかけで小川佳純は2020年1月17日に現役引退とティアモ枚方監督就任を同時に発表することになるのです。
小川監督の理想
小川監督は横浜F・マリノスでポステコグルー監督が確立した攻撃サッカーを理想とし、そこにチームの未来像を置いています。
しかしティアモ枚方ではまず弱点である守備の穴を塞ぐことに注力しました。
その結果、平均失点数は前年の「1.21」から「0.66」(2020シーズン第6節終了時)と大幅に改善します。
また選手時代に名古屋グランパスで監督だったドラガン・ストイコビッチからは「選手をヤル気にさせ、先頭に立って引っ張る力」や「ネバーギブアップの精神」を学んだと語ります。
そしてこの「ネバーギブアップ」…決してあきらめない気持ちが、地域リーグからJFLに昇格していく道のりの中で2つの大きな奇跡を呼ぶことになります。
JFL参入へ
2020シーズン、地域リーグからJFLへ昇格するためには
JFL昇格までの流れ
- 各地域リーグの代表チームとなる
- 各代表12チームで地域チャンピオンズリーグ一次ラウンドを戦い決勝ラウンドに勝ち上がる
- 地域チャンピオンズリーグ決勝ラウンドで上位2チームに入る
この3つのステップをクリアしていく必要があります。
JFLを目指す道のりの中、ひとつ目の奇跡は2020年10月3日、対おこしやす京都との関西サッカーリーグ最終戦で起こりました。
この試合、引き分け以上で関西サッカーリーグ優勝が決まるティアモ枚方。
逆に負けると他会場の結果次第では地域チャンピオンズリーグに出場することができなくなってしまいます。
おこしやす京都が先行する形で試合が進行し、試合終了間際まで1-2でリードを許す苦しいティアモ。
しかし土壇場の後半アディショナルタイム、ティアモはセットプレーからチョ・ヨンチョル選手の執念のゴールで追いつき2-2で試合終了。
ティアモ枚方は関西サッカーリーグDivision1で見事初優勝し、地域チャンピオンズリーグ一次ラウンドへの切符を手にしました。
その後、一次ラウンドを危なげなく突破し決勝ラウンドに進んだティアモ。
ふたつ目の奇跡はこの決勝ラウンドの対FC刈谷戦で起こります。
試合は最終盤になっても両者譲らずスコアレス。引き分けの気配も漂う中、なんと後半45分にFC刈谷が先制点。
誰もがFC刈谷の勝利と思った後半アディショナルタイム、浮き球のボールをティアモの道上選手が鮮やかなボレーでゴールへ叩き込み勝ち点1をもぎ取りました。
まさにネバーギブアップ。
小川監督が師事したストイコビッチの精神を、ティアモ枚方の選手たちが体現して見せた瞬間でありました。
結局、決勝ラウンドはティアモを含む3チームが勝ち点5で並ぶ大接戦。
各チームの得失点差が運命の分かれ目となったわけですが、初戦の十勝スカイアース戦で大量5得点を奪ったティアモ枚方が3チームの中では最多得失点差の+5で優勝。JFL参入を決めました。
思えば5得点を取った十勝戦こそが、攻撃サッカーを志向する小川監督の本当にやりたいサッカーなのでしょう。
結果的にその攻撃力が決め手となってJFLの切符を掴んだわけですから、小川監督としてもさぞかし嬉しかったに違いありません。
小川監督は将来Jリーグの監督を目指すとのことですが、指揮するために必要なS級ライセンスを所持しておらず、これから取得に向けて研鑽を積んでいくそうです。
どんな監督さんになるのか楽しみですね。
その前にまずJFLで対戦することになりますので、試合の際はどうぞよろしくお願いします。